東北森林科学会10周年記念事業について

東北森林科学会会長:小野寺弘道(山形大学農学部)

2005年7月20日

 東北森林科学会の創立10周年を記念して「白神山地の保全と未来」と題するフォーラムを開催することとなりました。このフォーラムは、白神山地の森林生態系保護地域への指定や世界自然遺産指定までの経緯を総括し、自然保護、地域との関わりなど、いくつかの視点から、これまでの研究の成果に基づきながら、今後の白神山地の保全や利用について考えることを目的としています。
 白神山地は、次代に引き継ぐべき人類の遺産としてその優れて普遍的な価値が評価され、1993年12月に、わが国ではじめて世界自然遺産に登録されました。このことによって、私たちは先人より受け継いだ白神山地の恵まれた自然環境と貴重な自然生態系をそっくりそのまま未来の人々に引き継ぐ責任が与えられました。周知のように、本年2月に地球温暖化防止のための京都議定書が発効しました。地球温暖化による広範な影響が様々な分野で懸念されているなか、温室効果ガスの削減に向けて二酸化炭素の吸収源である森林に対して大きな期待が寄せられています。しかし、森林は二酸化炭素の吸収のみならず実に多面的な機能を発揮します。そして、白神山地の森林はこれまでに多くの恵を地域にもたらしてきました。
 ところで、本年10月に「第2回世界自然遺産会議」が白神山地で開催されます。この会議は、アジア太平洋地域の世界自然遺産を有する16カ国27自治体が一堂に会し、世界自然遺産の保全と世界自然遺産を活かした地域づくりの在り方について議論するとともに、住民参加による豊かな自然を活かした循環と共生の地域づくりを促進することを目的に開催されます。そして、本フォーラムはこの会議の関連行事として位置づけられています。したがって、本フォーラムは「第2回世界自然遺産会議」の嚆矢としての性格をもつものであり、今回の「白神山地の保全と未来」は時宜にかなった意義のあるテーマであると考えております。
 本フォーラムの基調講演者ならびに事例報告者はいずれも白神山地の研究に関して第一線で活躍されてこられた方々です。本フォーラムはこれらの方々、ならびに、弘前大学、青森県のご理解とご協力によって開催される運びとなったものです。関係各位のご支援に心より感謝申し上げます。本フォーラムが白神山地の保全と未来について多くの示唆を与えることができれば幸いです。